<ネット上で問題になっている法律問題>

 

ミニ目次

一 音楽データのファイルについて

ハッキング行為について

 
困ったときの
救済サイト

 

日本弁護士連合会(日弁連)

国民生活センター

 

 
 
一 音楽データのファイルについて
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 自分で作曲した曲については、公表しようとしまいと問題ありません。著作権者は自分なので、誰の迷惑にもならないからです。
 では、自分の持っている
CDのデータを取り出して、何らかのファイルにして、それをネットで公開した場合はどうでしょうか?
 まずCDのデータを取り出す行為、個人利用の範囲を超えなければ問題ありません。それを何らかのファイルにしたとしても、著作権法的に大丈夫です。
 しかし、それを配布する行為は、個人利用の範囲を超えています。
 よって、著作権の侵害行為として、損害賠償(慰謝料)請求されかねません。
 そういうホームページが、関係者の目にとまると、ジャスラックをはじめあらゆる音楽関係の団体から、サイト停止の請求がきます。

 以上は、ファイルを垂れ流す側についてですが、受け取る側は問題にならないのでしょうか?
 結論を書けば、問題となりません。
 ただしリクエストなどと称して、「この曲をちょうだい」なんて注文しているとか、「がんばってください」とかを伝えた場合は、言い訳できません。著作権法違反行為に対して精神的に助長しているので、精神的幇助(ほうじょ)、として処罰されます。

2

たまに、

「自分が同じCDを持っている場合はダウンロードしてもいいですが、持っていない場合は、48時間以内に削除してください」

という記述が見受けられます。これを検証します。

 自分が同じCDを持っているものをダウンロードする場合は、そのファイルを作ろうと思えば作れるので、結局同じことです。そういう場合は、問題になることはありません。

 では、持っていない場合の48時間というのは本当でしょうか?
 結論を書くと、うそです。大嘘です。オオボラです。
  さっきも書いたとおり、何も注文などしたりせず、黙ってダウンロードすれば、別に消す義務なんてありません。
  「オリジナルを持っていないなら、二日目で消せ」ということが本当ならば、あなたがCDを借りてきて、それをMDやテープにダビングした場合、二日で消さなければいけないのです。

 実際はどうですか?

 気に入っている間は、消さないでしょう。個人的利用に関しては、ダビングも許されるのです。確かに、ダウンロードしたのと、ダビングしたものとは違うように思われます。しかし、曲のダビングされたテープなどをただでもらった場合はどうですか? 気に入っていても、二日経ったら消しますか? (ただし、ダビング物の有償取引、売買など、はいけません)CDの曲データをパソコンに取り込むことは、専用のソフトが売ってあったり、雑誌に入っていたりするので、一般オーディオのダビングと同じくらい簡単に行えます。

 ようは、垂れ流す(アップロードする)人間が悪いのです。これは、画像ファイルをダウンロードするときでも同じことがいえます。
 著作権法の趣旨から考えると、3〜4人に配るのは許されるはずです。
 なぜなら、バンドで買った楽譜を、メンバー3〜4人でコピーして配るのは許される、とされているからです。(判例に同旨)

3  論文ぽくなっております

 また、ダウンロードなどでゲットした著作物のとその使用に関して、「著作物」を「業務上電子計算機において使用する行為は、」「著作権を侵害する行為とみなす」(著作権法113条2項)ことができるという規定があることから、自己に著作権がない曲をMP3などに変換してアップされているものをゲットした場合でも、著作権侵害になりえる、との見解がある。

 確かに、「業務上」とは継続して使用することを言い、一般に言う業務行為をしていなくても、日常的に電子計算機(パソコン、ワークステーション、スーバーコンピューター)を使っていれば、「業務上電子計算機において使用する行為」といえる。

 しかし、著作権法113条2項で「著作物」と書いてある部分は、どの部分も「プログラムの著作物」と書いてある。とすれば、「プログラムの著作物」でない物ならば「業務上電子計算機において使用」しても、著作権侵害にはならない、と解する。

 そこで、曲をデータファイル(MP3など)に変換したものが「プログラムの著作物」といえるのかどうかが問題となる。

 この点「プログラム」(著作権法2条1項10号の2)とは、コンピュータを機能させて、創作的な表現(文学・学術・美術・音楽)の結果を得ることができるように、コンピュータに指令を出すように作られたもの、と解する。また「著作物」(著作権法2条1項1号)とは、文学・学術・美術又は音楽の範囲に属する、思想又は感情を創作的に表現したものを言う。
 よって「プログラムの著作物」とは、コンピュータに創作的な表現を出力させる指令を出すもの専用の、「思想又は感情を創作的に表現したもの」を言う、と解する。

 つまり音楽に限定して書けば、曲のデータファイルを再生できるプログラム用の、「思想又は感情を創作的に表現したもの」を言う、と解する。

 そこで、「思想又は感情を創作的に表現したもの」に、MP3ファイルのようなデータファイルも含めるのかが問題となる。

 データファイルとは、簡単にいえば文字が羅列したファイルである。羅列された文字それ自体は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」とはいい難い。
 確かに「プログラム」を使えば、データファイルから 「思想又は感情を創作的に表現したもの」を取り出すことはできる。しかし、データファイル自体は「思想又は感情を創作的に表現したもの」といい難い以上、「著作物」を「思想又は感情を創作的に表現したもの」だとしている現行法規に対し、データファイルを「思想又は感情を創作的に表現したもの」とする考えはそぐわない、と解する。

 したがって、「思想又は感情を創作的に表現したもの」に、データファイルは含まれない、と解する。

 だから音楽に限定して書けば、ダウンロードするデータファイルそれ自体には曲を奏でるためのプログラムを含まないこと及び、MP3などのファイル自体に思想又は感情は無いことから、それらデータファイルをダウンロードしてコンピュータで使ったとしても、著作権法113条2項のいう著作権侵害にはならない、と解する。

 仮に、データファイルが「プログラムの著作物」にあたるとしても、「電子計算機」で使わなければ何ら問題は無い。なぜならば、著作権法113条2項に「業務上電子計算機において使用する行為は、」「著作権を侵害する行為とみなす。」と書いてあるからである。

 ゆえに、MP3プレーヤーやCD−Rなどのメディアに移してオーディオプレーヤーで聴くようにしてしまえば、仮にデータファイルが「プログラムの著作物」にあたると解したり、たとえそのファイルを業務上(つまり、日常的に)使ったとしても、著作権法113条2項で言う著作権侵害にはあたらないことになる。

 


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