また、ダウンロードなどでゲットした著作物のとその使用に関して、「著作物」を「業務上電子計算機において使用する行為は、」「著作権を侵害する行為とみなす」(著作権法113条2項)ことができるという規定があることから、自己に著作権がない曲をMP3などに変換してアップされているものをゲットした場合でも、著作権侵害になりえる、との見解がある。 確かに、「業務上」とは継続して使用することを言い、一般に言う業務行為をしていなくても、日常的に電子計算機(パソコン、ワークステーション、スーバーコンピューター)を使っていれば、「業務上電子計算機において使用する行為」といえる。 しかし、著作権法113条2項で「著作物」と書いてある部分は、どの部分も「プログラムの著作物」と書いてある。とすれば、「プログラムの著作物」でない物ならば「業務上電子計算機において使用」しても、著作権侵害にはならない、と解する。 そこで、曲をデータファイル(MP3など)に変換したものが「プログラムの著作物」といえるのかどうかが問題となる。 この点「プログラム」(著作権法2条1項10号の2)とは、コンピュータを機能させて、創作的な表現(文学・学術・美術・音楽)の結果を得ることができるように、コンピュータに指令を出すように作られたもの、と解する。また「著作物」(著作権法2条1項1号)とは、文学・学術・美術又は音楽の範囲に属する、思想又は感情を創作的に表現したものを言う。
よって「プログラムの著作物」とは、コンピュータに創作的な表現を出力させる指令を出すもの専用の、「思想又は感情を創作的に表現したもの」を言う、と解する。 つまり音楽に限定して書けば、曲のデータファイルを再生できるプログラム用の、「思想又は感情を創作的に表現したもの」を言う、と解する。 そこで、「思想又は感情を創作的に表現したもの」に、MP3ファイルのようなデータファイルも含めるのかが問題となる。 データファイルとは、簡単にいえば文字が羅列したファイルである。羅列された文字それ自体は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」とはいい難い。
確かに「プログラム」を使えば、データファイルから 「思想又は感情を創作的に表現したもの」を取り出すことはできる。しかし、データファイル自体は「思想又は感情を創作的に表現したもの」といい難い以上、「著作物」を「思想又は感情を創作的に表現したもの」だとしている現行法規に対し、データファイルを「思想又は感情を創作的に表現したもの」とする考えはそぐわない、と解する。 したがって、「思想又は感情を創作的に表現したもの」に、データファイルは含まれない、と解する。 だから音楽に限定して書けば、ダウンロードするデータファイルそれ自体には曲を奏でるためのプログラムを含まないこと及び、MP3などのファイル自体に思想又は感情は無いことから、それらデータファイルをダウンロードしてコンピュータで使ったとしても、著作権法113条2項のいう著作権侵害にはならない、と解する。 仮に、データファイルが「プログラムの著作物」にあたるとしても、「電子計算機」で使わなければ何ら問題は無い。なぜならば、著作権法113条2項に「業務上電子計算機において使用する行為は、」「著作権を侵害する行為とみなす。」と書いてあるからである。 ゆえに、MP3プレーヤーやCD−Rなどのメディアに移してオーディオプレーヤーで聴くようにしてしまえば、仮にデータファイルが「プログラムの著作物」にあたると解したり、たとえそのファイルを業務上(つまり、日常的に)使ったとしても、著作権法113条2項で言う著作権侵害にはあたらないことになる。 |